今日を忘れる

雑僧の雑感　仏暦２５６５年11月　前半　vol.97

「今日を忘れる」

　人生は思い通りにはいかない

人生いろいろ　ままならない

　思い通りの人生を歩めたなら、なんと幸せな事だろうか。悩み苦しみを抱えて生きるのが人生なのかもしれない。作家の福澤徹三先生の『東京難民』というご著書に、こんな一節がある。「ぜんぶだめだったら、そこが出発点だ。もうだめだと思うのは過去への執着だ。こういうことわざがある。きのうにこだわり、あすを夢見て、きょうをわすれる」

　確かに、過去への執着を断ち切れない自分がいる。不確かな未来を夢見続ける自分がいる。そして、肝心な今日という日を忘れ去っている自分がいる。今日という日が辛いから、眼を背けてしまう自分がいる。

　昔は良かった、きっと未来は良くなるだろう。そんな事を思いながら日々を送る。でも、毎日が出発点なのだろう。今日に眼を背けていたら、前に進めない。過去に捉われ、未来に捉われる。そんな生き方をしてきた自分がいる。

　しかし大切なのは今この時、今日を忘れて生きていては駄目なのだという事を教えられた。今日を忘れず生きる。今日を大切に生きる。それが出来れば少しは人生楽になるかもしれない。けれど、頭ではわかっているが、なかなかそのような生き方が出来ないのも又、人生なのかもしれない。過去に捉われ、過去に執着し続け、不確かな未来に希望を持ち続ける。昨日や今日が駄目でも明日があると。でも、今日の積み重ねが過去となり未来となる。そのことを。今一度考えなければならないのだろう。今日を忘れない、そんな生き方がしたい。