縦書きと横書き
雑僧の雑感 仏暦2567年3月 後半 vol.130
「縦書きと横書き」
ご存じの通り、我が国は縦書きの文化である。漢字圏は縦書き、英語圏は横書きである。横文字と言うのはその為である。明治期以降、英語が日常生活に取り入れられるようになってから、横書きに移行していったように思われる。しかしながら、少し前までは縦書きの文化が残っていた。お店の看板などがそう。昔の看板は右から左へと書かれていた。「昔の横書き」なる表記を以前目にした事があるが、これは正確ではないだろうと思う。これは横書きではなくて、れっきとした縦書きである。所謂一行一文字である。一文字書いて改行をしている事になり、縦書きの三行三文字である。お寺の山号額や寺号額と呼ばれる扁額には、最後の行に署名、落款がある場合が多いが、これは小文字の縦書きで一行におさめられている。
古来より我が国は海外より新しいものを導入し、自国の文化と融合させて進化を遂げてきた。これは我が国特有の文化ではなかろうかと思う。仏教も呉服もカレーライスも漢字もカタカナ語もラーメンも。他国の文化を吸収し、自国の文化として定着させる。この柔軟性は誇るべき事であろうと思う。横文字文化が定着した世の中で、今更縦書きに戻す事はナンセンスだろうと思う。しかし、脈々と続いて来た縦書きの文化というものに、時には目を向け、そして細々とでも継承してゆく事も大切なのではなかろうか。縦書き文化が未だ残る業界に身を置く者としてそんな事を時折思う。
この記事へのコメントはありません。