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奇跡の詩集

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雑僧の雑感 仏暦256811月 後半 vol.170

「奇跡の詩集」

『電池が切れるまで』

という詩集がある

詩と画からなる詩画集である

 長野県立こども病院保護者の会である「すずらんの会」が編集したものである。命と向き合い病と闘う日々。懸命に生きる子供たちの紡ぐこの詩集は「奇跡の詩集」と呼ばれている。

 この詩画集に収められている二編の詩を引用させて頂く

引用の詩は青文字とした

引用元

『電池が切れるまで 子ども病院からのメッセージ』

編 すずらんの会

刊 角川文庫

 『命』

命はとても大切だ

人間が生きるための電池みたいだ

でも電池はいつか切れる

命もいつかはなくなる

電池はすぐにとりかえられるけど

命はそう簡単にはとりかえられない

何年も何年も

月日がたってやっと

神様から与えられたものだ

命がないと人間は生きられない

でも

「命なんかいらない。」

と言って

命をむだにする人もいる

まだたくさん命がつかえるのに

そんな人を見ると悲しくなる

命はやすむことなく働いているのに

だから 私は命が疲れたと言うまで

せいいっぱい生きよう

ある少女が亡くなる4カ月前に残した詩である

 『親の思い』        

五体満足で育っている子どもをもつと

子どものいない人をうらやむことがある

切って縫って体にきずをもつ子どもをもつと

元気で普通の子どもをうらやましく思う

一生ハンディの残る子どもをもつと

一時の治療ですむ子どもをうらやましく思う

余命宣告されたり子どもの死んでしまった親は

ハンディが残ってでも生きている子どもをもつ

親をうらやましく思う

子どものできない親は

産める親をうらやましく思う

腹の底から大笑いしているそんな時も良いけれど

私は いつも微笑んでいられる一日一日瞬間瞬間を大切にしたい

「私は命が疲れたと言うまで、せいいっぱい生きよう」

 病との闘いの日々、それは想像を絶する程凄まじい。因みに『親の思い』の母親はこの少女の母親ではない。保護者もまた、壮絶な闘いを繰り返していたのだろう。この『命』は当時多くの啓蒙活動に取り上げられた。この少女の想いは尊く魂の叫びに胸を打たれる。ひたむきに生きた少女の紡ぐ言葉は余りにも重い。しかし、これはこの少女の想いであり正義である。それは万人共通の正義とは違うのだろう。

人にはそれぞれ事情がある

止むにやまれぬ事もあるだろう

その選択が精一杯の事もある

 自分自身がどう受け止めるのか、それが大切ではなかろうか。保護者もまた悩み苦しみながら闘っていたのだろう。どれだけの経験をしたらこのような詩を書く事が出来るのか。世の全ての人々が、この『親の思い』のような気持ちでいたのなら、世界はもっと平和になるのかもしれない。私にはもはや悟りの境地にすら思えてくる。これとて私の受け止めであり万人共通ではない。故に押し付ける事も振りかざす事もしない。しかし、紡ぎ出された言葉の数々は間違いなく真実の言葉であろう。


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