天翔ける心
雑僧の雑感 仏暦2567年2月 前半 vol.127
「天翔ける心」
文中の敬称は省略させて頂きます
「天翔ける心 それがこの私だ」
二代目市川猿翁
令和6年1月28日、都内ホテルにて二代目市川猿翁、四代目市川段四郎の送る会が開催された。兄猿翁が天翔ける存在ならば、弟段四郎は全てを優しく包み込む大地のような存在だろう。大地があるからこそ羽ばたくことができる。この兄弟はあまりにも偉大であった。そして絶妙なるバランスで一門を牽引してきたように思われる。
ご存じの通り歌舞伎は「傾く」からきている。異風を好み、派手な格好をして常識の範疇を超えてゆく。常軌を逸した芸ともいえよう。それを常に追い求め進化し続けていたのが、猿翁と段四郎兄弟ではなかろうか。
「何か途方もないものを追い求めて
私の心は絶えず天高く天翔けていた」
二代目市川猿翁
常識の範疇を超えてゆくことを追い求めた猿翁、そしてそれをしっかりと受け止め、支えていた段四郎。この兄弟が残したものは余りにも大きい。この精神、神髄を受け継いでゆくことは並大抵のことではないだろう。この精神をしかと受け継いだ役者を私は一人知っている。
送る会に参列させて頂き、在りし日を偲びつつ、献花、礼拝をさせて頂いた。お別れの会が一つの節目となると思っていた。少しは踏ん切りがつくだろうとも。でも、そうはならなかった。かえって辛くなった。頭では判っていたが、心では認めたくなかった部分、それを現実のものとして受け入れなければならないような複雑な思い。けれども、前に進むしかないのだろう。
生前の御厚誼を深謝するとともに
謹んで追悼の意を表する
合掌
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