ハチドリのひとしずく
雑僧の雑感 仏暦2567年3月 前半 vol.129
「ハチドリのひとしずく」
森が燃えていました
森の生きものたちは
われ先にと逃げていきました
でもクリキンディという名のハチドリだけは
いったりきたり
口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは
火の上に落していきます
動物たちがそれを見て
「そんなことをして、いったい何になるんだ」
といって笑います
クリキンディはこう答えました
「私は、私にできることをしているだけ」
南米アンデス地方に伝わる物語『ハチドリのひとしずく』である
法蔵菩薩は世自在王仏の御前で、仏と成る強い決意を示された。その決意に対して、世自在王仏は比喩をもって修行が完成する事を説き示される。「たった一人で、大海の水を、升で汲み取ろうとしよう。それがどれ程困難な事であったとしても、永い時間をかけたなら、必ず全てを汲み尽くす事が出来るであろう」と。嘘偽りのない真実の心をもって臨めば必ず成し遂げる事を説き示されたのである。
法蔵菩薩のご修行は、不可思議兆載永劫と経典に説かれる。「たとえ我が身を、苦しみや毒の中に沈めたとしても、我が修行は精進にして、耐え忍び決して悔いることはないだろう」との決意を示された法蔵菩薩。文字通り艱難辛苦の修行の末に成仏し、阿弥陀仏と成られた。経典には「忍終不悔(にんじゅふげ)」と説かれる。ハチドリの一滴の如くそのご修行は果てしない。
いつだって決意するのは造作もないが、決意一つで動くほど現実は容易くはない
小野不由美先生著
十二国記シリーズ『丕諸の鳥』より
決意と行動に真心を持って臨む事は決して容易な事ではないだろう
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