千両みかん
雑僧の雑感 仏暦2567年8月 後半 vol.140
「千両みかん」
神田の名店「万惣フルーツパーラー」は、黒船来航の少し前に創業した水菓子を扱う「万惣」がかつて出店していた喫茶店である。値段はお高めだが、旬の果物をふんだんに使用したパフェやパンケーキが人気だった。勿論コーヒーも紅茶も美味しかった。うろ覚えだがミックスジュースもあったような気がする。
蕎麦の名店「神田まつや」で蕎麦を手繰り
「万惣」でパフェを頂く
これぞ神田須田町の粋
「万惣フルーツパーラー」は惜しまれつつも2012年に休業する。最近では、「肉ビル」の愛称で親しまれていた万世ビルの建て替えもあった。焼き肉やステーキも良いが、「肉ビル」と言えばパーコー麵が美味しかった。かつて地下にお店があった頃から幾度となく足を運んだ。余談だが、歌舞伎座に隣接する「歌舞伎蕎麦」も店を閉じた。「かき盛り」は絶品であった。叶うならもう一度頂きたいものだ。
現在はハウス栽培等で、季節以外でも果物や野菜を口にする事が出来るが、これはごく最近の話であろう。旬というものの概念がなくなりつつあるのかもしれない。しかしながら、この酷暑で頂く冷えたみかんはたまらなく美味しい。落語『千両みかん』で登場するのは神田の「万惣」だろうか。「酔い覚めの水千両と値が決まり」といわれるが、夏場のみかんは値千金。一房百両である。
人は叶わぬものを追い求める存在なのだろう
当たり前に存在しているものが、当たり前でなくなった時、初めて大切なものと気が付くことも多い。失せものも、失くして初めてその大切さに気付く。夏場にみかんを当たり前に食する事が出来る現代、その当たり前の有難さを改めて感謝とともに実感したい。
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