残すことなく省くことなく
雑僧の雑感 仏暦2567年1月 後半 vol.126
「残すことなく省くことなく」
幸せに ならなきゃだめだ
誰一人
残すことなく 省くことなく
歌人で小説家の加藤千恵先生が高校生の時に詠んだ和歌である
令和6年、新しい年の幕開けがこのような事になろうとは、いったい誰が想像しただろうか。元日から鳴りやまぬ地震警報。航空機事故、大規模火災。途轍もなく永い時間に感じられた正月三が日。災害や事故は日時を選ばない。正月気分が一瞬にして吹き飛んだ。災害で犠牲になられた方々の廻向を勤めさせて頂くとともに、被災された方々が、心身ともに安寧であらんことを切に願う。そして、これ以上、悲しい事が起きないよう願わずにはいられない。
世界中の 本や音楽買い占めて
なんとか夜を 乗り切らなくちゃ
同じく加藤千恵先生の和歌
明けない夜はない
降りやまない雨はない
災害や悲しい出来事は時を選ばない。娑婆世界は忍土。耐え忍ぶ場所とは言いながら、出来る事なら、辛い思いや悲しい思いは少ないほうが良い。けれども、どうにもならないこともまた事実。正月早々の悲しい出来事。そんな時、ふと加藤先生の和歌を思い出した。そして著作を読み返した。誰一人、残すことなく、省くことなく。幸せになって欲しい。純真で真っすぐ。娑婆を生きる我々への力強いエールに思えてくる。ままならぬからこそ、この和歌が胸に染みる。娑婆世界、思うようにならない世界である。阿弥陀様は、この娑婆世界から、全ての人々を仏の世界である極楽浄土に救いたいと誓われた。そして、それを実現すべく修行し、十劫の昔に仏と成られた。南無阿弥陀仏と称えたのならば、残すことなく、省くことなく極楽浄土に往生が叶う。加藤先生の和歌と阿弥陀様の本誓願が重なる。
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