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めでたくもありめでたくもなし

アイキャッチ用雑僧雑感
雑僧の雑感 仏暦25681月 後半 vol.150

「めでたくもありめでたくもなし」

門松は 冥途の旅の 一里塚

めでたくもあり めでたくもなし

 その昔、京の人々は正月三が日は外出を避け、この風習が広まったと伝わる。めでたい歳の初めに外出を避けるようになったのは、不気味な僧が出没するとの話があった為である。その僧は、頭に髑髏を刺した杖を手に「ご用心、ご用心」と叫びながら京の町を練り歩いたという。その僧は一休宗純。室町期の臨済宗の僧である。6歳にして出家をし、カラスの鳴き声を聞いて悟りの境地に至ったと伝わる。その際に、師より印可を与えられるも、権威を否定する一休禅師は、これを辞退したという。

 印可は、師がその道に達した弟子に与える許状で、印定許可の略。いわゆるお墨付きの事である。禅家では、悟りを開いたと認められた弟子に与えられた。これにならい武道や茶道でも印可が与えられる事がある。正月を迎えると、また一歩あの世に近づいた。「めでたいのう、めでたいのう」と上記の和歌を詠み、「ご用心、ご用心」と練り歩く。

 浄土宗三祖良忠上人は

建暦二年の元日に

五濁の憂き世に生まれしは 恨みかたがた多けれど

念仏往生と聞く時は かえりて嬉しくなりにけり

と詠まれた

良忠上人14歳の時の歌と伝わる

 死の縁は時と場所を選ばない。仏道を真っすぐに歩まれた偉大なる先達は、その事をしっかりと見据え仏道に励まれたのだろう。因みにある歳の正月に私が詠んだ歌。「目出度きは、あらたまの歳、初日の出、思ひあらたに世渡る誓ひ」である。その直後、「情けなや、法の白道、歩むとぞ、誓ひ空しく、行くは世の道」と詠んだ。偉大なる先達の背中は果てしなく遠い。


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