醍醐味

雑僧の雑感 仏暦2568年10月 前半 vol.168
「醍醐味」
『涅槃経』に「五味相生(ごみそしょう)」の譬えがある。一般的に五味と言えば、甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の五種であろう。又、香木の世界では「六国五味(りっこくごみ」で、産地や香りにより分類される。
伽羅(きゃら)・羅国(らこく)・真南蛮(まなばん)
真那伽(まなか)・佐曽羅(さそら)寸門陀羅(すもたら)
の六種である
『涅槃経』の五味の譬えは、牛乳を精製してバターになるまでの過程を五段階とし、仏法の教えの段階に譬えたものである。「牛より乳を出し、乳より酪を出し、酪より生蘇を出し、生蘇より熟酥を出し、熟酥より醍醐を出す」と説かれる。牛乳がバターのようなものになるまでの五段階である。ようなものと書いたが、醍醐の製法は正確には分からないらしい。乳製品の最上のものとの事である。
乳味(にゅうみ)は仏教の教えの基本
酪味(らくみ)は少し進んだ教え
生蘇味(しょうそみ)はより深い教え
熟酥味(じゅくそみ)は真理の一歩手前まで進んだ教え
醍醐味(だいごみ)は完全なる真理
にそれぞれ譬えられる
醍醐味のサンスクリット語は「サルピス・マンダ」。これにカルシウムを足した造語が「カルピス」である。カルピス株式会社の創業者である三島海雲は、浄土真宗の寺院に生まれ、十三歳で得度したという。大正新脩大蔵経の編纂に携わった浄土宗の渡辺海旭に、カルシウムも摂れ、最上の乳製品であるとの意で「カルピス」と名付けたい旨を、三島海雲は渡辺海旭に相談して製品名が決まったという。もしかしたら、乳製品の最上であるところの醍醐とは「カルピス」の事かもしれない。
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